蛍光ランプ技術解説 |
蛍光ランプの構造 |
蛍光ランプは@蛍光物質が塗装されたAガラス管と、ガラス管両端に取り付けられたB電極とで構成されています。 電極はコイル状のフィラメントにエミッター(電子放射性物質)を塗装したものです。 ガラス管内には、放電しやすくするために2〜4hpa(1気圧は約1013hpa)の圧力のC封入ガス(アルゴンあるいは混合希ガス)と微量の水銀が封入されています。 |
蛍光ランプの構造図 |
蛍光ランプの発光原理 |
点灯(始動)の際、@電極(陰極)に電流を流して予熱すると、高温になったエミッター(電子放射性物質)からA電子が豊富に放出されます。 放出された電子は、反対側のB電極(陽極)に引かれて移動し、放電が始まります。放電により流れる電子は、Cガラス管内に封入されたD水銀原子と衝突します。 衝突により水銀電子は電子のエネルギーを受けE紫外線を発生します。ガラス管内壁に塗布されたF蛍光物質が紫外線を受けて、G可視光線を発生します。 蛍光ランプの光色はこの蛍光物質を選択・調合することにより白色、昼白色、青色、緑色など種々の色の光が得られ、ランプの使用場所、使用目的などに応じて光色を選ぶことができます。 |
蛍光ランプの点灯方式 |
蛍光ランプは放電によって発光します。点灯(始動)するためには、電極のフィラメントに予備電流を流して高温になったエミッター(電子放射性物質)から電子を放出させると共に、電極間に高電圧をかける必要かあります。方式の違いにより使用する安定器・ランプは、ともに異なります。 |
1−スタータ式点灯回路点灯 点灯回路が簡単なため、最も広く普及しています。始動するとき、電極を予熱し、高圧パルスを発生するスタータ(始動装置)をもちいるものです。スタータとしては、点灯管が多く使用されています。点灯管は、バイメタルの機械的な動きを利用しているため、ランプ点灯までに2〜3秒必要です。最近は、点灯管にかわる電子点灯管や電子点灯回路を内蔵した器具もあります。電子点灯管や電子点灯回路を内蔵した器具は、即時(0.6〜1.2秒)で点灯します。 2−ラピッドスタート式点灯回路点灯 点灯管を用いたスタータ式が点灯に少し時間がかかる点を、安定器とランプの組合せによって改善したものです。安定器に電極予熱回路と昇圧回路が付加されているので、スタータは不要。ランプ点灯は、約1秒で点灯します。ランプ自身にも始動補助装置をほどこし、低い電圧で放電を開始するように工夫されています。 3−インバータ式点灯回路点灯 商用の交流電源を整流平滑し、高周波に変換して蛍光灯を点灯させるものです。点灯周波数は家電用リモコン周波数帯33〜40kHzを除いた20〜70kHzに設定されています。インバータ式は、電極の予熱時間が少なく、即時点灯ができ、省電力・高効率・50Hz/60Hz両用・低騒音・ランプのちらつきがかんじたれない等の特徴があります。 |
蛍光灯の諸特性 |
★周囲温度による明るさの変化 蛍光灯は、周囲温度によって明るさなどが変化します。ガラス管内の水銀蒸気圧が、周囲温度の変化によって変わることから起こります。 ・水銀蒸気圧が変化すると、紫外線の発生効率が変わり光速が変化します。 ・封入ガスの圧力と水銀蒸気との圧力比が変わって、始動特性が変化します。 蛍光灯は極端な低温または高温環境での使用のは不向きといえます。 |
★冬場(低温時)の特性 蛍光灯は、20℃〜25℃の周囲温度で使用したとき最高の特性を発揮するようにつくられています。夏場は点灯直後でも支障のない明るさになりますが、冬場は安定した明るさになるまで約5〜6分かかります。冬場のまだ寒い朝の室内などでは夏場に比べ点灯直後非常に暗く感じたり、ちらつくことがありますが、室温が上がれば明るくなります。 |
★電圧変動と明るさ・寿命の関係 <電源電圧が高い場合> ランプ電流が増して明るくなりますが、効率は悪くなりランプや安定器に無理が生じて寿命がみじかくなります。 <電源電圧が低い場合> ランプ電流が減少して暗くなり、あまり低いとスムーズに点灯しなくなり、ランプの寿命をみじかくします。 |
★光束減退特性 蛍光灯は、点灯時間の経過とともに、黒化や蛍光物質の劣化などによって次第に光束が減少します。しかしランプの消費電力はほとんど変わりません。 ランプの種類ごとに差があり、管壁負荷(単位面積当たり電力)の大きいランプほど光束減退が大きくなります。 |
★点滅回数 蛍光灯は、点灯する際に最も負担がかかり、1回の点滅で約1時間寿命がみじかくなります。1日数回程度の点滅ならほとんど影響はありませんが、20〜30回も点滅すると、寿命は極端に短くなります。 |
★残存率(寿命) 蛍光灯の寿命は、カタログなどに表示されている「定格寿命」の時間にすべてのランプが点灯しなくなるのではなく、電圧や点滅の頻度、製造条件などによって多少のばらつきがあります。そのため2.5時間点灯し0.5時間消灯する連続繰り返し試験での残存率が50%となった時間を定格寿命としています。 |
使用中に発生する外観変化 |
★アノードスポット 電極の近くに発生する比較的境界のはっきりした黒化現象をアノードスポットといいます。これは、ランプ点灯時間の経過にともなって、ランプの種類に塗装されているエミッターが飛散し、電極付近のランプ管内壁に付着して生じるものです。 |
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★エンドバンド ランプの管端から数cm位の所からランプ中央方向へむかって、黒褐色で帯状に発生する黒化現象を「エンバンド」といい、これは長時間点灯後発生しるもので、点灯中エミッターの蒸発により発生する微量のガスと水銀が化合したものです。明るさや、寿命への影響はほとんどありません。 |
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★EC黒化・黄変 EC黒化は、内面導電性被膜(EC被膜)を施したラピッドスタート形蛍光ランプに見られる現象で、内面導電性被膜と水銀粒子間の微放電によって蛍光物質が変色することによって起こります。また、「黄変」は内面導電性被膜と蛍光物質との反応によって生じるものです。これらの現象は、空調設備から風がランプに直接当たり管壁が冷やされ、水銀が付着しやすい場合に発生しやすく、使用条件の改善でも低減できます。 |
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★水銀付着による蛍光ランプの黒ずみ 電極付近への付着 長時間点灯されずに放置したランプを点灯した場合、点灯直後に見られる現象です。これは輸送中、または放置中に電極部(フィラメント、リード線)に付着した水銀が点灯直後瞬間的に蒸発し、管壁に凝集したものです。しばらく点灯するとランプに温度の上昇で水銀が蒸発し、黒ずみは消滅します。ランプ特性への影響はありません。 |
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ランプ中央への付着 ランプ中央部のした下側や風のあたるところなど、ランプの一部分が他の部分より冷たくなるような場合に生じる現象です。これは、水銀がランプの最冷部に集まる性質をもっているため生じる現象で、ランプ特性には影響ありません。 |
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更新日 : 2000/04/10 . Copyright © 1999 tozaidensan. produce by Watanabe |